脳卒中とは

脳卒中イメージ

脳内の血管が破裂または閉塞することによって発生する血管障害を、脳卒中または脳血管障害と言います。この障害は、脳の血管が閉塞することによって生じる脳血管障害(脳梗塞や一過性脳虚血発作)と、血管が破裂することによって引き起こされる脳血管障害(脳出血やくも膜下出血)に分類されます。

この中でも脳梗塞は、より早期(発症して4.5時間以内)に詰まった血の塊を溶かす治療(血栓溶解療法)を行えば後遺症が軽くなることがあります。また、4.5時間を過ぎても、カテーテルで血栓を吸引、回収する治療(脳血管内血栓回収療法)が行える場合があるので、脳卒中治療の専門機関にすぐに受診することが重要です。

このような症状はご相談ください

  • 片側の手足・顔半分の麻痺・しびれが起こる
  • 呂律が回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない
  • 力はあるのに、立てない、歩けない、フラフラする
  • 片方の目が見えない、物が二つに見える、視野の半分が欠ける
  • 片方の目にカーテンがかかったように、突然一時的に見えなくなる
  • 経験したことのない激しい頭痛がする

一過性脳虚血発作(TIA)

脳内の血流が一時的に減少することにより、短時間(数十分程度)ではありますが、脳梗塞に類似した症状が現れることがあります。一過性脳虚血発作という病態です。

この発作の原因には、動脈硬化や不整脈が関与しており、心臓などで形成された血栓が脳の血管に流れ込み、血流を妨げること、また脳血管における動脈硬化の進行により血管が狭くなり、血流が悪化することなどによります。

主な症状としては、片側の手足のしびれや麻痺、言語障害(呂律が回らないなど)、片側の視力低下などが挙げられますが、通常は1時間以内に症状が回復します。しかし、放置すると数日から数ヶ月の間に脳梗塞を引き起こす可能性があるため、これらの症状が見られた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。

一過性脳虚血発作が疑われる場合、患者さまの症状に基づいて頸動脈超音波検査やMRI検査などの画像診断を行い、頸動脈や頭部の血管の状態を確認します。さらに、心房細動の有無や心臓の健康状態を調べるために心電図やホルター心電図、心臓超音波検査も実施し、診断を進めていきます。

治療について

治療には、保存的療法と外科的治療の二つの方法があります。患者さまの症状やその重症度、発症の原因に基づいて、最適な治療法が選定されます。

保存療法は主に薬物療法を含み、心房細動などによって血栓が形成されている場合には抗凝固薬が用いられます。また、動脈硬化の多くは生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)が要因であるため、これに対する薬物療法や生活習慣の改善も重要な要素です。

外科的治療は、頸動脈の狭窄が確認され、血流が悪化している場合に実施されます。主な手法としては、血管を切開して狭窄や詰まりの原因となるプラークを除去する頸動脈内膜剥離術や、カテーテルを用いて血流が悪化している部分を拡張する頸動脈ステント留置術があります。

脳梗塞

脳卒中の過半を占める病型です。脳の血管が細くなったり、血管に血栓が詰まったりして、脳に酸素や栄養が送られなくなるために、脳の細胞が障害されます。

脳梗塞は詰まる血管の太さやその詰まり方によって3つのタイプ、「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓症」に分けられます。症状やその程度は障害を受けた脳の場所と範囲によって異なります。

①ラクナ梗塞
脳に入った太い血管は、次第に細い血管へと枝分かれしていきます。この細い血管が狭くなり、詰まるのがラクナ梗塞です。日本人に最も多いタイプの脳梗塞で、主に高血圧によって起こります。

②アテローム血栓性脳梗塞
動脈硬化(アテローム硬化)で狭くなった太い血管に血栓ができ、血管が詰まるタイプの脳梗塞です。動脈硬化を発症・進展させる高血圧症、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病などの生活習慣病が主因です。

③心原性脳塞栓症
心臓にできた血栓が血流に乗って脳まで運ばれ、脳の太い血管を詰まらせるものです。原因として最も多いのは、不整脈の1つである心房細動です。3つの病型のなかでは最も急激に症状が現れ、重症であることが多いです。

脳出血

脳の血管が破れ、漏れ出した血液によって周囲の脳細胞が圧迫され神経細胞が障害される病気です。細い血管(細小動脈)が、主に高血圧に由来する動脈硬化で痛み、破綻して起こります。

くも膜下出血

脳の表面の動脈の一部に瘤状に腫れた脳動脈瘤ができ、それが破裂し、脳の表面を覆うくも膜という薄い膜の内側に出血する病気です。そのため、他の脳卒中と違い、今までに経験したことのない激しい頭痛が起こります。くも膜下出血は脳卒中の中では死亡率が高く、重篤な病です。

脳卒中の予防

脳卒中の5大危険因子は高血圧、糖尿病、不整脈(心房細動)、喫煙、脂質異常症(高脂血症)です。その他、男性、高齢者、肥満、過度の飲酒、運動不足などが脳卒中の危険因子としてあげられます。これらの危険因子を日頃からしっかりコントロールすることが重要です。

◆ 脳卒中予防十か条(日本脳卒中協会)

  1. 手始めに 高血圧から 治しましょう
  2. 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
  3. 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
  4. 予防には たばこを止める 意志を持て
  5. アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
  6. 高すぎる コレステロールも 見逃すな
  7. お食事の 塩分・脂肪 控えめに
  8. 体力に 合った運動 続けよう
  9. 万病の 引き金になる 太りすぎ
  10. 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ

循環器疾患とは

狭心症

心筋に酸素を供給する血管は冠動脈といいます。この冠動脈が何らかの要因で狭窄し、十分な血液(酸素)が供給されない状態を狭心症と呼びます。狭心症は主に三つのタイプ(労作性狭心症、不安定狭心症、冠攣縮性狭心症)に分類されます。

治療について

慢性冠動脈疾患に関連する労作性狭心症や冠痙縮性狭心症においては、発作時に硝酸薬が用いられ、発作の予防にはカルシウム拮抗薬などの薬物治療が行われます。不安定狭心症の場合には、アスピリン、硝酸薬、ヘパリンなどの治療が実施され、必要に応じて冠動脈形成術(PCI)などのカテーテル治療による血行再建も検討されます。加えて、生活習慣の改善も重要な要素として位置づけられます。

心筋梗塞

心筋に血液を供給する冠動脈が何らかの理由で閉塞し、その結果、心筋に酸素や栄養素が届かなくなることで壊死が生じる状態を心筋梗塞といいます。

主な症状としては、胸部の締め付け感や圧迫感が15分以上続くことが挙げられます。その他にも、放散痛(肩や上腕への痛みの放散)、冷や汗、嘔吐、呼吸困難などが見られることがあります。

治療について

急に症状が現れる場合は急性心筋梗塞と診断されます。この状況では、血管の閉塞を迅速に解消することが求められます。そのため、カテーテルを使用して詰まった血管を拡張する冠動脈形成術(PCI)が一般的に行われ、また血栓を溶解する薬剤を注射する血栓溶解療法も選択肢として考えられます。これらの治療法で改善が見込めない場合には、開胸手術による冠動脈バイパス術が検討されます。

一方、発症から一定の時間が経過している場合には、薬物療法が選択されます。この際には、抗血小板薬(アスピリンなど)、スタチン系薬剤、抗狭心症薬(β遮断薬やCa拮抗薬など)が用いられます。

さらに、再発を防ぐためには、日常生活の習慣を見直すこと(禁煙、節酒、過食を避ける、体重管理など)が重要です。また、生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症など)を抱える方は、それに対する適切な治療を受けることが求められます。

心不全

心不全とは、心臓の機能が何らかの要因によって低下し、全身に十分な血液が供給されない状態を指します。主な原因としては、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、高血圧、糖尿病、不整脈、心筋症、心臓弁膜症などが挙げられます。

心不全になると、息切れや呼吸困難、身体のむくみ(特に足や足首)、疲労感、体重の増加などの症状が現れます。心不全は急性心不全と慢性心不全に分類され、急性の場合は心機能が急激に低下し、激しい呼吸困難や咳、ピンク色の痰、チアノーゼなどが見られ、迅速な治療が必要です。一方、慢性心不全では、運動時の息切れや息苦しさ、身体のむくみ、体重増加などが徐々に進行します。

治療について

急性心不全の患者さまには、迅速な治療が不可欠です。酸素吸入や血管拡張薬、利尿薬、強心薬などの薬物療法を入院可能な病院で実施します。一方、慢性心不全の患者さまには、主に薬物療法(血管拡張薬、利尿薬、β遮断薬など)を行い、生活習慣の改善(塩分や高脂肪食の制限、適度な有酸素運動など)にも注力します。また、基礎疾患に対して手術が必要な場合には、その手術を実施することもあります。

心臓弁膜症

心臓には血液の流れを円滑に保つために4つの弁が存在します。これらの弁が何らかの理由で正常に機能しなくなると、血液の逆流などの問題が発生し、心臓弁膜症と呼ばれる状態になります。この病気には、弁の開放が不十分で血流が妨げられる狭窄症と、弁が適切に閉じずに血液が逆流する閉鎖不全症の2つのタイプが存在します。

発症の原因としては、先天的な弁の異常、加齢による弁の劣化、リウマチ熱や心疾患(心筋梗塞、心筋症)、自己免疫疾患、外的な傷害などが挙げられます。

主な症状には、呼吸困難や息切れ、身体のむくみ(特に足や顔)、全身の倦怠感、疲労感、腹部の膨満感などがあり、これらは心不全の症状と類似している点が特徴です。

治療について

薬物療法と外科療法の二つの治療法が存在します。薬物療法は主に症状の緩和を目的としており、利尿薬、血管拡張薬、抗凝固薬(ワルファリン)などが含まれます。

根本的な治療を目指す場合には外科療法が選択されます。外科的手法には弁置換術や弁形成術があり、カテーテル治療を選択することも可能です。手術の必要性は患者さまの病状に応じて判断されます。

不整脈

心臓の拍動は、一定のリズムで自発的に行われています。このリズムが乱れると、不整脈と診断されることがあります。心臓が規則正しく拍動することは、血液が全身の器官や細胞に効率的に供給されるために不可欠です。不規則な拍動が続くと、動悸やめまいなどの症状が現れ、心拍出量が著しく低下すると、最悪の場合には死に至ることもあります。

不整脈の原因は多岐にわたり、生命に影響を及ぼす場合もあれば、特に問題がないケースも存在します。

頻脈性不整脈と徐脈性不整脈

不整脈は主に、頻脈性不整脈と徐脈性不整脈の二つに分類されます。頻脈性不整脈は、心拍数が1分間に100回を超える状態を示します。この場合、心臓の上部(心房)が不規則に収縮する(洞頻脈、心房期外収縮、発作性上室性頻拍、心房粗動、心房細動)か、心臓の下部(心室)が異常に速く拍動する(心室期外収縮、心室頻拍、心室細動)ことが考えられます。一方、徐脈性不整脈は1分間の心拍数が50回以下になる状態であり、洞不全症候群や房室ブロックなどがその原因とされています。

不整脈に伴う一般的な症状には、動悸や脳の虚血による失神(意識消失)、倦怠感、疲労感、胸痛、胸部の不快感、めまいなどが含まれます。また、期外収縮による不整脈の場合、脈が飛ぶような感覚を感じることもあります。

検査について

不整脈の診断において、通常実施されるのは心電図検査です。必要時長時間の心電図検査や心臓超音波検査など近隣医療機関にご紹介することもあります。

治療方法

不整脈の治療には、症状の緩和を目的とした治療と予防的なアプローチが存在します。脈拍を調整する薬剤や、心拍のリズムを整える抗不整脈薬が処方されます。また、心房細動や心房粗動に起因する不整脈では、脳梗塞のリスクを軽減するために抗凝固薬が使用されることがあります。症状が重篤な場合には、カテーテルアブレーションやペースメーカー、埋込み型除細動器(ICD)が適用されることがあります。