脳神経内科とは

脳神経内科画像

脳神経は、脳や脊髄、そこから枝分かれして全身に分布している末梢神経で構成されます。脳神経内科はそのどの部分にどのような異常が起きたかを診断して、治療に結びつける診療科です。
脳や神経の病気の診断のためには、詳しく症状をお聞きして、特殊な診察器具を用いて診察を行うことが一番重要なことになってきます。またCTやMRIなどの画像が診断に役立つこともあります。必要時提携医療機関でのCT,MRI検査を行うことがあります。
以下よく見受けられる症状や代表的疾患をお示しします。ご不安な方は受診ください。

脳神経疾患でよくみられる症状

  • 頭痛
  • めまい
  • しびれ
  • 力が入らない(麻痺)
  • ふるえる
  • 動きが鈍い
  • けいれんする
  • 意識が悪い
  • もの忘れ
  • 体重減少、筋力低下
  • 疲労感 など

主な脳神経の疾患

  • 脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)
  • 一過性脳虚血発作
  • てんかん
  • 認知症
  • パーキンソン病
  • パーキンソン症候群
  • 脊髄小脳変性症
  • 片頭痛
  • 緊張性頭痛
  • 群発頭痛
  • 三叉神経痛
  • 多発性硬化症
  • 視神経脊髄炎
  • 髄膜炎
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 重症筋無力症
  • 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
  • 本態性振戦
  • めまい症
  • 頸動脈狭窄症
  • 一過性黒内障など

代表的な脳神経内科疾患、症状についてご説明します。

頭痛・めまい・しびれ

頭痛

頭痛のページをご覧ください。

めまい

めまいは、目が回るようなくらくらとした感覚の総称です。実際には幅広い症状が含まれており、自分やまわりがぐるぐる回る、ふわふわしている、気が遠くなりそうな感じ、眼前暗黒感、物が二重に見えるなどが含まれます。

めまいの原因として、内耳性めまい(三半規管の障害によるめまい、前庭機能障害)が最も多く見られますが、中には脳卒中や心臓疾患などによる命にかかわる場合もあります。また薬剤性、高血圧症、脱水症、不整脈、起立性低血圧症、熱中症、各種神経難病、低血糖症、貧血、外傷後頸部症候群、頸性めまい、鼻性めまい、心身のストレス、疲労などもめまいの原因になります。

一般的には、ぐるぐる回るめまいは内耳性めまいのことが多いですが、血圧が普段より上昇している、突然片側の手足に力が入らなくなった、片側の顔の動きが悪くなった、呂律が回らなくなった、物が二重に見える、顔や手足の感覚がにぶくなった、耳が聞こえにくくなった、まっすぐ歩けなくなったなどの症状がみられるときには、脳卒中の可能性がありますのですぐに病院を受診しましょう。

しびれ

しびれは、感覚の経路 (感覚受容器から末梢神経、脊髄、大脳へ至る感覚の伝導路)のいずれかに障害がおきると出現します。しかし、日常生活の中では、しびれという言葉は、いろいろな意味で使われています。たとえば、「触った際の感覚がにぶい」、「温度が感じにくい」、「痛みを感じにくい」などの感覚鈍麻 (感覚の低下) を意味することもあれば、「何もしなくてもジンジンする、ビリビリする」、「針でさされたような感じ」、「灼けつく様な感じ」などの異常感覚を意味することもあります。

また、「手足に力が入りにくい」、「動きが悪い」などの運動麻痺 (脱力) をしびれとして表現することもあります。 しびれで病院を受診される患者さんの多くが心配している病気の一つとして、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害があります。通常、脳血管障害によるしびれは、急に出現した片側性の症状であることが多いです。感覚障害に筋力低下を伴うことが多いのですが、感覚障害が唯一の症状であることもあります。

口の周りと片側の手がしびれる場合なども脳血管障害の可能性があります。また、脊椎の異常による脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどでも脊髄や神経根が圧迫・刺激され手足のしびれ、痛み、脱力を引き起こします。

手足の末梢神経障害では、一つの末梢神経にのみ障害がみられる単神経障害、ばらばらに複数の末梢神経が障害される多発単神経障害、左右対称性でいわゆる手袋靴下型に障害がみられる多発神経障害があります。手根管症候群や橈骨神経麻痺などの絞扼に伴うもの、血管炎や膠原病などの炎症が関連するもの、ギラン・バレー症候群などの免疫が関連するもの、糖尿病やビタミン欠乏などの代謝性疾患に伴うものなど、末梢神経の障害だけでもしびれの原因は実に様々です。

しびれは、様々な原因で引き起こされます。内科的な治療で済む場合もありますが、整形外科や脳神経外科などでの手術が必要になる場合もこともあります。適切な治療を行うためには、原因の特定が最も重要と考えられます。また、しびれには、重大な病気が隠れていることもありますので、安易に放置しないで、まずは脳神経内科を受診しましょう。

脳卒中・一過性脳虚血発作

脳卒中・循環器疾患のページをご覧ください。

てんかん

てんかんは脳内の神経細胞の過剰な電気的興奮に伴って、意識障害やけいれんなどを発作的に起こす慢性的な脳の病気です。この病気は紀元前から知られており、かつては憑き物にとりつかれて生じる病気と信じられていたため、いまだに多くの誤解や偏見があります。過剰な脳の活動が脳で起こるその場所に応じて症状も様々なものとなります。

たとえば、いわゆる「けいれん」と呼ばれる手足をガクガクと一定のリズムで曲げ延ばしする間代発作や、手足が突っ張り体を硬くする強直発作、あるいは非常に短時間の意識消失が突然起こる欠神発作、全身や手足が一瞬ピクッとするミオクロニー発作、感覚や感情の変化、特殊な行動などいろいろな症状があらわれる焦点意識現存発作など、その症状は極めて多彩です。

ただし、発作の症状は患者さんごとにほぼ一定で、同じ発作が繰り返し起こることが、てんかんの特徴です。また、発作を起こしている最中は脳の中の電流が乱れているため、脳波を測定すると異常な波があらわれ、てんかんの診断に用いられます。

原因としては構造的、素因性などがあり、構造的病因の場合は脳梗塞・脳出血、脳腫瘍、脳炎など脳の病変が原因となっている部位がMRIなどでみつかります。しかし、脳波やMRIで明らかな異常が見つからない場合も多く、診断に難渋する場合も少なくありません。そのため、てんかんの診断で最も大切なのは発作を知ることです。発作症状,発作の起きやすい時間帯・状況、発作頻度など,患者さんだけでなく発作を目撃した方からも情報を聴取する必要があります。

スマートフォンが普及しているので、発作がみられた際に発作の様子を撮影していただくことをお勧めしています。発作の様子を撮影した動画は診断する上で非常に役立ちます。脳波やMRIで診断根拠が得られなくても、発作に関する情報に基づいててんかんと診断されることもあります。 発作で意識が消失することは、患者さんにとって社会生活上最も大きな障害となる症状で、事故にあう危険はもちろん、就労や就学、あるいは自動車運転などに際し大きなハンディキャップとなります。

従っててんかんの治療は、発作をいかに消失させるか、あるいは意識消失を伴う発作の回数をいかに減らせるかが重要な目標となります。具体的な治療方法としては、抗てんかん薬の調整が主ですが、自己判断で薬を中断しないことや生活習慣などが、発作を防ぐうえで重要です。また、中には外科治療で完治を期待できる場合もあり、早期に適切な診断を行うことも大切なことです。

認知症

認知症のページをご覧ください。

パーキンソン病

パーキンソン病は脳の中脳という場所にある黒質ドパミン神経細胞が減少して、体が動きにくくなったり、ふるえが起こる病気です。パーキンソン病の4徴とは、静止時振戦、筋肉が固くなる筋固縮、動作が鈍くなる無動または寡動、転びやすくなる姿勢保持障害を言います。これらの運動症状のほかに、表情が乏しくなったり、便秘や頻尿、発汗、易疲労性(疲れやすいこと)、嗅覚の低下、起立性低血圧(立ちくらみ)、気分が晴れない(うつ)、興味が薄れたり意欲が低下する(アパシー)などの症状も起こることがあります。

静止時振戦
手、足などがふるえます。このふるえは、特に静止時に目立ちます。
筋固縮

筋肉が固くなります。パーキンソン病患者の手足を曲げるとガクガクとした抵抗を感じます。

無動

全身の動作が鈍くなります。動き出すのに時間がかかり、ゆっくりとしか動けません。

姿勢保持障害

体のバランスが悪くなり、倒れやすくなります。座ったり、立ったり、姿勢を保ったりすることが困難になります。

ほとんどの場合、遺伝歴のない孤発型です。加齢が重要な危険因子ですが、遺伝性の場合、その一部は20歳よりも若くして発症するものもあります。中高年以上で発症すると思われがちですが、若年発症のパーキンソン病も存在します。10万人あたり100-150人前後ですが、60歳を越えるとその罹患率が増加します。

症状や経過からパーキンソン病を疑ったら、MIBG心筋シンチやダットスキャンといった核医学検査や頭部MRI検査などを行い診断します。検査ができない場合は、ドパミン補充療法にて症状が改善するかどうかを確認する場合もあります。 治療の基本は薬物療法です。ドパミン神経細胞が減少するため少なくなったドパミンを補います。

他にもドパミン作動薬、MAO-B阻害剤、抗コリン剤、アデノシンA2a受容体拮抗剤、COMT阻害剤、ゾニサミド、塩酸アマンタジン、ドロキシドパなどがあります。早期は比較的反応も良好で十分コントロール出来ますが、進行期になるとウェアリングオフ(薬が効いている時間が短くなる現象で、1日の中で症状がよくなる時間帯や悪くなる時間帯が出てきます)、ジスキネジア(薬が効きすぎて手足が勝手に動いてしまう現象)が問題となります。また、内服で症状のコントロールが困難な場合や、副作用のため必要な量を飲むことができない場合には、手術(脳深部刺激療法など)を行うことがあります。

日常生活においては、運動療法、特にストレッチは姿勢の維持に役立ちます。パーキンソン病では前かがみや斜め横になる姿勢が起こりやすくなります。自分ではまっすぐと感じる姿勢が、実際には斜めになっていることが少なくありませんので、できるだけ鏡を見て姿勢を良くしましょう。自分では大丈夫と思っていても転倒が起こりやすいので、躓くようなものは片付け早めに手すりを付けます。 パーキンソン病は一般医より専門家がフォローする方が、生命予後が良いというデータもありますので、診断が疑われるときは早めに脳神経内科を受診しましょう。

パーキンソン症候群

パーキンソン病に似た症状を呈する疾患群です。具体的には多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症などがあります。こういった疾患も診療を行っておりますのでご相談ください。

筋萎縮性側索硬化症

筋肉を動かす指令を伝達する運動神経細胞に障害が生じる病気です。この病は主に50代から60代の男性に多く見られ、指定難病の一つとして認識されています。

発症の原因のすべては解明されていませんが、筋力の低下が顕著な特徴であり、手足や喉、舌の筋肉が衰えていきます。その結果、食物の飲み込みや会話が徐々に困難になり、病状が進行すると全身の筋肉が弱まり、歩行が難しくなったり寝たきりになることもあります。

現在、確立された治療法は存在せず、症状の進行を遅らせるためにリルゾールなどの薬物療法が用いられています。食事に関しては、飲み込みやすい食材を選ぶことが推奨されており、体の硬直を防ぐためにリハビリテーションも行われます。呼吸機能が低下した場合には人工呼吸器の使用が考慮され、食事が困難な場合には胃ろうの設置も検討されます。

脊髄小脳変性症

小脳と脳幹の変性または萎縮により、身体の動作が円滑に行えなくなる状態を脊髄小脳変性症と称します。原因は明確には特定されていませんが、遺伝的要因や免疫学的要因が関与することもあります。一般的な症状としては、歩行や立位時のふらつき、指先の震え、言語障害などがあり、筋力には影響が見られません。症状は遺伝性かどうかによって異なることがあり、遺伝子が関与している場合は比較的若い年齢で発症することが多いです。

現時点では、効果的な治療法は確立されていませんが、症状を軽減するための対症療法として、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)を用いた薬物療法や、運動機能の低下を防ぐためのリハビリテーションが実施されています。

神経免疫疾患

免疫とは外部の病原体などに対して自分を守るためのシステムです。しかし何らかの原因で、この免疫システムが自分自身を標的として攻撃し発症する疾病を自己免疫疾患と呼びす。脳・脊髄・末梢神経(神経筋接合部を含む)に対する自己免疫による病気が免疫性神経疾患です。代表的な疾患だけでも、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、重症筋無力症(MG)、ギラン・バレー症候群(GBS)、フィッシャー症候群(MFS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、神経サルコイドーシス、神経ベーチェット病など、多くの疾患があるのが特徴です。急性期の治療と慢性期の治療を組み合わせながら治療を行っていきます。