頭痛

頭痛イメージ

頭痛とは、頭の一部あるいは全体の痛みの総称です。後頭部と首(後頸部)の境界、眼の奥の痛みも頭痛として扱います。頭痛が起こると脳の病気を心配される方が多くいらっしゃいますが、脳自体には痛みを感じる神経はありません。ですから、頭痛以外の症状を伴わない場合は、脳の病気の可能性は低くなります。

ただし、脳を覆っている膜(髄膜)や頭蓋内血管には痛覚神経がありますので、突然の頭痛で、これまでに経験がないひどいもの、短時間で激しい痛みとなる頭痛、意識が悪い、高熱がある、手足の麻痺やしびれを伴うような場合には、髄膜炎、脳炎、脳動脈解離・くも膜下出血などの脳卒中などの脳の病気の症状として出てくる頭痛の可能性がありますので、至急受診して正確な診断を受けるほうがよいでしょう。

以前から同じような頭痛を繰り返している場合を慢性頭痛と呼びます。生命の危険はないことが大部分ですが、生活に支障を来すものも含まれています。片頭痛や緊張型頭痛が代表的です。最近は新たな治療薬もありますので、脳神経内科、脳神経外科、頭痛外来などを受診されるとよいでしょう。慢性頭痛でも、頭痛が経過と伴に悪化してくるような場合には脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などの可能性もあります。

慢性頭痛の中には難治性のものもあります。また必ずしもすべての頭痛に対して完全に痛みを取れるような治療法があるわけではありません。使用可能な治療法を駆使すること、頭痛による日常生活・仕事・家事・学業などへの悪影響を最小限にする努力を主治医と患者さまが共同作業で進めていく必要があります。

片頭痛

片頭痛は頭の中の血管が広がる際に起きる頭痛のことで、若い女性に多く、一般的には頭の片側のこめかみ辺りに、脈打つ様なズキズキとした痛みが特徴です。
頻度は人それぞれで、週1回という方もいれば、月1回程度の方もいるなど様々です。数時間から数日間痛みは続き、しばしば吐き気や嘔吐を伴います。頭痛の最中は光や音といった刺激に過敏になり、日常の些細な動き(階段を昇るなど)で痛みが悪化します。症状が強い場合は寝込んでしまうほどです。
頭痛の前兆として、目の前にキラキラ・ギザギザした光が見える方もいらっしゃいます(閃輝暗点)。
赤ワイン、チーズ、チョコレートといった食品は片頭痛を誘発すると考えられています。
近年新しい治療薬や予防薬が発売されております。ご希望の方は受診時にご相談ください。

緊張性頭痛(緊張型頭痛)

緊張性頭痛は、肩こりや同じ姿勢で居続けることなどが原因となって発症します。デスクワーク長時間続けている場合などです。
後頭部から首にかけての筋肉が緊張し、頭の周囲が締めつけられたような鈍痛や頭の重だるさが症状として現れます。
動かすことで痛みが軽減することがあり、また疲労のたまる夕方にかけて痛みが強くなる傾向があります。
投薬による治療に加え、マッサ-ジ、運動など、肩や首の血行を良くすることが大切です。

群発頭痛

群発頭痛は、左右どちらかの目の奥がえぐられるように激しく痛む頭痛です。
1度頭痛が始まると1か月程度続くといわれています。
20~40歳代の男性に多くみられ、 結膜充血・流涙・鼻汁といった症状も合わせて現れることがあります。
アルコールや喫煙を控えるなど、生活習慣を改善させることで症状の改善が期待できます。
群発頭痛がおさまってもその後に半年~数年ほど経過してからまた同様の痛みが出る場合が多いです。
治療としては、注射薬や高濃度の酸素を吸う方法があります。

認知症

認知症とは「いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」を言います。つまり、後天的原因により生じる点で、知的障害(精神遅滞)とは異なります。認知症の原因としては一番多いのはアルツハイマー病で認知症の6割以上を占めます。それに次いで多いのがレビー小体型認知症、血管性認知症といわれています。

アルツハイマー病

アルツハイマー病は、脳にアミロイドβ蛋白というタンパク質がたまり、さらにタウというタンパク質がたまって、神経細胞が減少し脳が萎縮していきます。特に、海馬とよばれる記憶の中枢から脳の萎縮が始まって拡がっていきます。そのため、症状は記憶障害(もの忘れ)から始まり、徐々に認知機能全体が低下していきます。最初は、もの忘れ(「少し前のことが思い出せない」)が目立つものの日常生活にはほぼ支障がありません(アルツハイマー病による軽度認知障害)。次第に生活にも支障がでてきて認知症となり(アルツハイマー病による認知症あるいはアルツハイマー型認知症)、認知症は軽度、中等度、高度と徐々に進んでいきます。軽度の認知症ではもの忘れに加えて日付がわからなくなり、中等度になると自分のいる場所がわからなくなります。妄想や徘徊などの症状が問題になることもあります。さらに高度(重度)になると家族など親しい人の顔もわからなくなり、最終的には寝たきりになります。

アルツハイマー病の診断では、病気の経過や症状の特徴が重要です。補助検査として脳の画像 (MRI、CT、 SPECT、 PET) や脳脊髄液などの検査を行うことで、高い確実度でアルツハイマー病を診断することが可能です。 アルツハイマー病の治療は、薬物療法と非薬物療法があります。薬物療法は病気の進行を遅らせますが、病気そのものの進行を止めることはできません。そのため、脳トレやゲームなどのリハビリテーションや、料理や洗濯などの生活リハビリ、園芸療法、音楽療法、回想法などの非薬物療法を併用することにより、生活の質を上げることが期待されます。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症はレビー小体という構造物が神経細胞にたまって、認知症などのさまざまな症状を示す病気です。認知症ですが、アルツハイマー病とは異なり、もの忘れが目立たないこともあります。中核的な特徴としては、①認知機能が変動すること(日時によって症状がよくなったり悪くなったりします)、②幻視(ありありとした具体的な幻視を繰り返します)、③パーキンソン症状(動作がゆっくりになります)、④睡眠時の行動の異常(悪夢をみて暴れます)があります。

さらに、自律神経の症状(立ちくらみなど)、うつなどの精神症状などもみられます。 レビー小体型認知症の診断では、病気の経過や症状の特徴が重要です。補助検査として脳の画像 (MRI、CT、SPECT、PET) やダットスキャン、MIBG心筋シンチや睡眠時の脳波などの検査を行うことで、確実度の高い診断ができます。 現時点では根本的な治療法はなく、認知症症状、パーキンソン症状、睡眠障害など、それぞれの症状を軽減させる治療法を適切に組み合わせて治療します。認知症の症状に対する薬としては、アルツハイマー病でも使われるドネペジルという薬を使用します。

血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害の結果、認知症になった状態を指します。典型的な場合、脳血管障害が起こるたびに認知機能が階段状に低下していきます。症状は脳血管障害の場所や拡がりによって、認知症以外に、手足の麻痺、言語の障害、嚥下(飲み込み)の障害、失禁など、さまざまな症状がみられます。

頭部の画像検査(CT、MRI、脳血流SPECTなど)で脳梗塞や脳出血などを検出し、脳血管障害が認知症の原因と判断される場合、血管性認知症と診断します。脳血管障害が原因となるため、治療は高血圧などの生活習慣病をコントロールすること、脳梗塞に対しては抗血小板剤(血をサラサラにする薬)を使うなどして、脳血管障害の再発予防を行います。

その他ビタミンBの不足や、甲状腺ホルモンの不足などでも認知機能低下が起こるため血液検査も行います。